認知症への不安を解消していくには ~家族が知っておきたい4つの心理ステップ~

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認知症は特別な人に起こる特別な出来事ではありません。2025年には65歳以上の高齢者のうちの5人に1人が認知症になるという推計も出ています。既に認知症の家族を抱え、不安を抱えている方もいらっしゃるかもしれません。
認知症を抱える家族の不安を和らげるための解決策はいくつかあります。その中でも非常に効果的な方法が、家族が必ず辿る「4つの心理ステップ」について知るということです。

この記事では、各心理ステップの状態と、その時期をどう過ごすと良いのかをご紹介していきます。

ステップ1 戸惑い・否定

~誰にも相談できず、家族だけで抱え込む時期~

認知症の初期段階に入った本人に、これまで考えられなかった言動が見られるようになります。
家族は「一体どうしたの?」と戸惑い、「そんなはずはない」と否定する気持ちが働くでしょう。誰にも相談できず、家族だけで悩んでしまう時期です。

戸惑い・否定時期の過ごし方

まずは抱え込まないことが大事です。
医療が進歩している現代では介護が長期にわたることも多く、一人きりでの介護、ひとつの家族だけでは抱え込めなくなっているのが現実です。
そこで望ましいのは、外部サービスなどに介護の一部を任せることです。この頃から同じ悩みを持つ仲間や家族会などとつながりを持って、抱え込まない意識を持ち続けましょう。また、「あの人よりも若いのに」などと他のケースと比べるのはあまり意味がなく、不幸の始まりとなるのでよくありません。認知症の進み方や症状の現れ方は多種多様です。介護者ご自身が、自分らしくいられる介護が最適な介護といえるでしょう。

ステップ2 混乱・怒り・拒絶

~4つのステップの中で最もハードな時期~

次はステップ2です。認知症の人はどれだけ注意しても新しいことを覚えられません。家族の認知症に対する理解が不十分の際、「どうしてできないの」、「なんでやらないの」と混乱してしまいます。そういった、本人に振り回される状況が続くことで「いい加減にしてよ」と怒りがこみ上げます。やがて家族の怒りが限界に達すると、本人を拒絶する心理状態になります。この時期が最もハードな時期といえます。

混乱・怒り・拒絶時期の過ごし方

このステップは社会的なつながりが特に重要になる時期でもあります。次々と起こる症状を適切に理解し、対応のヒントをくれる人や負担も疲れも軽減してくれる各種サービス、共感し、先の見通しを伝えてくれる仲間や介護家族会などとのつながりが大切です。誰かと相談し、肩の力を抜いて本人と向き合うことで次のステップに移ることができます。

ステップ3 割り切り・あきらめ

~家族が認知症を受け入れ始める時期~

家族がステップ2を繰り返しながら介護生活を続けていくと、いつしか「認知症の人にイライラしてもしかたがない」という割り切りあきらめの気持ちが湧いてくるはずです。同時に介護生活にも慣れて、本人への対応が上手になってくるでしょう。ただし本人の認知症の症状が進行して新たな症状が出てきた場合、再び混乱してステップ2に逆戻りしてしまうケースがありますのでご注意ください。

割り切り・あきらめ時期の過ごし方

このステップに入ると認知症に対する心のゆとりが出てくるかと思います。この時期が認知症の本人が過ごしやすい環境を整備することに適したタイミングです。本人は脳の機能が低下しているため、周囲の世界の認識はひどく曖昧です。さらに、注意力も集中力も低下しています。介護者が本人にわかりやすい言葉で声を掛けたり、集中できる環境を整えたり、慣れ親しんだものは変えたりしない等の工夫があれば、本人が安心感を持って過ごせるようになるでしょう。

ステップ4 受容

~さらなる未来を考えていく時期~

家族がステップ1からステップ3までを経験していくと、最終的に受容の境地に至ります。ここまでくれば本人の認知症に対する理解も深まり、今の姿をあるがままに受け入れられるようになるはずです。本人の良い面に目が向いて、本人にとっても家族にとっても良い介護ができる状態といえましょう。

受容時期の過ごし方

この時期にするべきことは、本人に「自分はかけがえのない役に立つ存在」であることを感じさせてあげることです。本人はできないことやわからないことが増えて、自分が自分でなくなっていくかのような強い不安や絶望を感じています。それらを軽減するには、役割や仕事などを通じて本人に「自分も役に立てる存在」であること、「かけがえのない存在」であることを感じさせてあげることが肝心です。昔の歌や写真などを通して、本人を力づけてあげてください。

認知症への不安を解消していくには ~家族が知っておきたい4つの心理ステップ~ まとめ

介護する家族はこれら4つのステップを避けて通ることはできません。しかし、医療・福祉サービスや介護家族会などの外部に相談や協力を求めることができれば、辛いステップである1と2をごく短い時間で通り抜けられるでしょう。1人では乗り越えることが難しい辛いステップも、他の人と協力できれば乗り越えることができるのです。

ABOUTこの記事をかいた人

元橋亜由子

年齢:28歳
認知症の母親の介護に疲れ、友人の勧めで認知症コミュニティルームに通い始める。同じ悩みを持った認知症家族との交流により母親との付き合い方が改善した。
今は認知症家族のための情報提供をするなどの活動を行っており、そうした活動を広く伝えるため執筆中。