認知症の方が食事を拒否する原因と解消法

スポンサーリンク

健康でいるために、食事をとることは大切なことです。
わたしの母も以前は食べることが大好きでしたが、認知症になってからは食事を拒否することが多くなりました。わたしと父は母が拒否する理由がわからず、途方に暮れました。
専門家などに話を聞いたりしているうちに、段々と母のためにできることがわかってきました。

今回は、わたしたちのように困っている方の助けになればとこの記事を書きました。

継続して食事をとらない場合は対策を

認知症の人に限らず、高齢になると活動量が少なくなり、必要とするエネルギー量も少ないため、食欲がわかないことも多くなります。ただ、一食分食べなかったくらいでは身体に大きな影響はありません。

問題は、食事拒否が続く場合です。
わたしも初めは、なんとか食べてもらおうと、強くすすめたり、理由を問いただしたりしました。すると、母は食事の時間自体が不快なものになってしまったようで、呼んでもなかなか食卓にすら来てくれなくなってしまいました。かえって拒否を強めてしまう結果になってしまいました。
わたしの「なんとか食べて欲しい」という気持ちは、いつしか母にとって「食べなければならない」というストレスに変わってしまっていたのかもしれません。

わたしたちは、本来なら母にとって楽しみであるはずの食事の時間が負担にならないように、状況を理解したうえで見守ることが大切だったのです。

原因別解消法

食事を拒否する理由にはそれぞれ原因が隠されています。これらの症状については、本人が気付かず過ごしている場合もあるので、家族や周囲の人々が注意や配慮をしなければなりません。

原因別に解消法を見ていきましょう。

失認

わたしたちは食べられるものとそうでないものの区別がつきます。赤いボールとトマト、泥水とみそ汁を間違えることはないですよね。
ですが、認知症の症状のひとつである失認はそうした判断や理解ができない状態なのです。

解消法

「温かいみそ汁だよ」と声をかけたり、「おいしいトマトだね」と一緒に食べたりすると、食べ物と認識でき、食べ始めることもあります。
※目の前にあるものがどんな食べ物なのかを説明してあげることも有効です。

! さらに !

  • 温めなおして香りを立たせる。
  • ご飯をおにぎりにして手に持ってもらう。  etc.

※嗅覚や触覚などの根源的な感覚を活かすことで食べ物の認識が促されることもあります。

失行

食べ物を口に入れて噛んで飲み込むという一連の動作ができなくなってしまうのも認知症の症状のひとつである失行が原因です。

解消法

ゆっくりと一緒に食事をしてみましょう。見よう見まねで釣られて食べることもあります。

! さらに !

食事の盛り付けや食器を工夫してみましょう。
小出しにするのか大皿に盛りつけるのか、箸は使用するのかなど食べやすさは人それぞれです。
どんな工夫が食べ方を理解しやすいのか、試行錯誤してみましょう。

体調が悪い

自分で体調不良を訴えることのできる人ならば大丈夫なのですが、そうでない場合は、介護者が異変に気付いてあげなければなりません。

解消法

日々の声かけが大切です。
「気分はどう?」や「暑くはない?」など、なるべく「はい」か「いいえ」で答えられる簡単な質問が良いでしょう。
受け答えがいつもと違う、顔色や表情・態度などに異変が現れることがあるので見逃さないように気を付けてください。

原因が解決できれば、食欲が戻ってくることがあります。

気分が落ち込んでいる

気分が落ち込んでいると、食事を美味しく感じられなくなる場合があります。

解消法

ひとりきりの時間が短くなるだけで気分の落ち込みが少し改善される可能性があります。
食事の時間はなるべく誰かが一緒にいてあげてください。

母も父と一緒のときは表情も柔らかく、いつもより落ち着けるようです。

! さらに !

うつ状態の場合は、行動に移すまでに時間がかかってしまうことがあります。
最初の一口を食べることができればそのまま食べてくれることもあるので、味見をお願いするなどして、最初の一口を食べてもらうきっかけを作ってください。

飲み込む力が弱っている

飲食物が飲み込みづらくなる嚥下障害になると、飲食物が期間に入ってむせてしまい、とても苦しいので、その恐怖から食事を拒否する方もいるようです。

解消法

在宅での食事介助でできるのは、食べ物の固さや大きさを食べやすいように工夫することです。
※「とろみ剤」という食事に混ぜるととろみがついて食べやすくなるものを使用する方法もあります。

自力で解消できない場合は、医師への相談が必要です。

その他

病気の副作用や環境などによって、食事に集中できなくなっている方もいるかもしれません。

解消法

副作用:
飲み合わせや副作用の相談ができる環境を作ることが大切です。お薬手帳を必ず持参して、医師に相談してみましょう。

環境:
介護者がよかれと思ってやったことが逆効果という場合もあります。これまでの生活環境などを考え、整えていきましょう。

認知症の方が食事を拒否する原因と解消法 まとめ

母にとって「食べること」はいつの間にかとてもエネルギーのいる行為になっていました。
食に対する欲求が低下したとき、わたしたちにできることはそれを超える食べたくなる気持ちを刺激できる工夫です。
一緒に食事をしたり、母の好きなものを作ったり…。できる工夫はいろいろあります。
わたしははじめを失敗してしまいましたが、父のおかげで今では母も楽しく食事ができることが多くなってきました。
これからも楽しい食事を心がけていきたいと思っています。

ABOUTこの記事をかいた人

元橋亜由子

年齢:28歳
認知症の母親の介護に疲れ、友人の勧めで認知症コミュニティルームに通い始める。同じ悩みを持った認知症家族との交流により母親との付き合い方が改善した。
今は認知症家族のための情報提供をするなどの活動を行っており、そうした活動を広く伝えるため執筆中。