杖は人の移動をサポートする道具のひとつです。歩行に不安のある方が杖を使うと転びにくくなり、歩きやすくなります。
では皆さんは杖を選ぶ際のコツをご存知でしょうか?
杖の正しい知識は意外と知られておらず、誤った使い方で思わぬ事故が起こることもあるそうです。
この記事では、杖を使う理由やその中のひとつ「T字杖」の正しい持ち方、選び方についてご紹介します。
目次
杖を使うと歩きやすくなる理由
人は立って歩くとき、足で体を支えています。そして、地面に接する左右の足の裏と、その間に挟まれた領域である「支持基底面」の中に重心があることで体を安定して保持できます。前かがみになるなどして重心線が支持基底面から外れると、バランスを崩して倒れてしまいます。杖は重心を保つために大きな役割を果たしています。
人は立っているとき、数10㎏もの負荷(体重)が両足にかかります。杖を使えば負荷が杖の方にも分散されるので、長距離を歩いても体が疲れにくくなるのです。
杖の選び方
一口に杖といっても、その種類は多種多様です。材質に拘らなければ1000円~2000円というリーズナブルな値段で購入することができますが、いざ買うタイミングになると意外と悩むものです。
ここではその中で最もスタンダードな形であり、多くの人がイメージしやすいT字杖について「携帯性」、「長さ調節機能」、「強度(耐久性)」そして「見た目」の4つの点から述べたいと思います。
携帯性
普段の歩行に不安がなく、長い距離を歩くときや疲れたときだけに杖を使いたい人には折り畳みタイプがおすすめです。
一方、外出時にほぼ毎回杖を使う人には折りたためない通常のタイプが良いでしょう。何故なら折り畳みタイプは継ぎ手部分に部品が使用される分だけ、通常タイプよりも重くなりがちだからです。また、畳んだり伸ばしたりする手間もあるので、使う頻度で折り畳み式にするかどうかを検討しましょう。
長さ調節機能
T字杖を選ぶ際、長さが調節できるかどうかは必ずチェックしておきたいポイントとなります。
例えば、杖を使う人が背骨の圧迫骨折をして、以前よりも背中が丸くなってしまったり加齢によって姿勢が変わったりなどで、杖の適切な長さが変わる場合、調節ができない物だと買い替えなければいけません。
※長さが調節できないタイプでも専用の道具で支柱を切断すれば調整できますが、当然ながら一度短くした杖の長さを元に戻すことができないので注意が必要。
強度(耐久性)
アルミ合金製やカーボンファイバー製のものがおすすめです。
支柱がプラスチック製の安価な杖の中には、男性が両端を持ってぐっと曲げるとたやすくたわんでしまうものがあります。転倒しそうになったときは全体重が杖にかかりますので、強度のしっかりしたものがいいですね。
見た目
杖選びでは安全性や機能性だけでなく、見た目の良さも重要になります。
「杖は何だかファッションに合わないから使いたくない」という方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
でも、心配はありません。T字杖はデザインの幅が広く、色や柄のバリエーションが豊富です。すぐにお気に入りの物が見つけることができるでしょう。
杖は日常の歩行を助けるためだけの単なる道具ではありません。歩く機会を増やして身体機能の維持や外の世界との交流で刺激を得たりすることも、杖を使う目的のひとつです。
4つの点を考慮しながら、出かけるのが楽しくなるような1本を見つけましょう。
杖の正しい持ち方
持ち方が間違っていると、杖は歩行を助けるどころか転倒の危険を招いてしまう道具になりかねません。
ここでは正しい杖の持ち方について「杖の長さ調節」、「握り方」、「持ち手」の3つの点から述べていきます。
杖の長さ調整
腕の角度は30~40度
杖の長さ調節は、最も注意したいポイントです。背筋を伸ばした状態で立ち、腕を自然に体の前に降ろして肘を30~40度に曲げた状態が、T字杖を持つときの基本姿勢です。
何故、30~40度がベストかというと、肘を伸ばす筋肉である上腕三頭筋が最も力を出しやすい角度だからです。そうすれば、杖をしっかりと地面に押し付けることができるのです。
長さの目安
杖を持つ側の足から前方に20㎝、そこから外側に20㎝移動した位置が杖先をつく目安となります。このとき、グリップを掴んで、杖の先端が地面につく長さがその人のベストな長さです。使う人に合ったシャフトの長さに調節しましょう。
このように最適な杖の長さはその人によって微調整が必要なため、初めて使う場合は専門家によるチェックをおすすめします。
握り方
杖を持つ際、グリップの長い方を全ての指で握っている方はいるでしょうか。実はその握り方は間違った握り方なんです。それだと、シャフトに垂直に力がかからず不安定になり、杖先をついたときに滑ったり、シャフトが曲がったり折れたりする恐れがあるのです。
! 正しい握り方 !
まずグリップの長い方を手前にし、人差し指と中指でシャフトを挟むように持ちます。また難しければ、人差し指をシャフトに添わせても構いません。正しい握り方を習慣づけておきましょう。
持ち手
杖を握るのは、左右どちらの手なのかも誤解しやすいようです。足が弱っていてT字杖を使っている人は必ず、杖を弱い足とは反対側の手で持つようにしましょう。
例えば右足が弱ければ、利き手に関係なく、左手で持つのが正解です。
どちらかの足が弱っているわけではなく、ただ疲れたときに体を支えるためだけに使うのであれば持ちやすい方の手で大丈夫です。試しに左右片方ずつ歩いてみて、どちらが歩きやすいのかを探ってみてください。
【知っておきたい】杖選びのコツ まとめ
今回は杖の選び方や使用する際のコツをご紹介いたしました。杖の長さや使用方法を誤ると事故にも繋がります。ご自身に合った杖を購入するために、この記事を参考にしてみてはいかがでしょうか。