【初めての遺言書】単なる「お願い」にしないための書き方

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遺言書を書く目的は人によって異なると思いますが、多くの人は「自分の遺産を自分が分配したいように残す」ために書くのではないでしょうか。
実際遺言書は、うまく遺産を分配するのに、とても有効です。
遺言書は実利的なものになりますので、法的に制限があったり、ルールに多少複雑な部分があったりして敬遠しがちな方も多いと思います。

そこで、この記事では遺言書の種類や書き方をわかりやすく説明していきます。

遺言書の種類

大きく分けて「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」のふたつがあります。

自筆証書遺言

本人が作成する遺言書で、全文を自筆で書きます。保管は自分で行います。高額な財産がない人や急いで遺言書を作る必要がある人向けです。

メリット
  • いつでも作成でき、作り直しやすい。
  • 作成時に内容を完全に他人に知られることがない。
  • 費用が掛からない。
デメリット
  • 形式や内容を間違えると無効となり、相続手続きができない。
  • 代筆が不可能である。
  • 保管中の紛失や、遺族に発見されない場合がある。
  • 第三者に内容を改ざんされる恐れがある。
  • 死後、家庭裁判所の検認が必要で相続手続きに時間がかかる。

公正証書遺言

全国各地にある公証役場で、公証人に作成してもらう遺言書です。体が不自由だったり、多少判断能力が低下していたりする場合でも公正証書遺言なら作成できることもあります。

メリット
  • 法律の専門家である公証人に作成してもらうので、形式面で無効になりにくい。
  • 筆跡や内容の真偽で遺族が揉める恐れが少ない。
  • 公証役場で原本を保管するので紛失の恐れがない。
  • 死後、家庭裁判所の検認が不要なのですぐに相続手続きができる。
デメリット
  • 財産の額や相続人の数に応じて手数料がかかる。
  • 作成に時間がかかる(2~3週間程度)。
  • 証人2人の立ち合いが必要。
  • 公証人や証人に内容を知られる。

※ただし秘密保持義務があるため、広まることはほぼない。

遺言書を書く前に

「何が遺産にあたるか」は遺言書を書く前に必要な知識なので是非、把握しておきましょう。

〈遺産にあたるものリスト〉

遺産にあたるもの
現金
預貯金 骨董品
不動産(家を含む) 美術品
貴金属
有価証券 生命保険

 

遺品(遺産にあたらないもの)
  • 釣り道具やプラスチックの将棋駒など趣味で使うもの。

→一般的に見て高価にはならないため。

  • テレビやパソコン、洗濯機といった生活必需品にあたるもの。

→金額的には曖昧ですが、入らないことが多い。

遺産に比べると金銭価値が低く、遺産として分けられない物が「遺品」となります。
遺産ではないからと勝手に持っていってしまえば、親族同士のトラブルにつながる可能性もあります。みんなで集まって合意のもとで形見分けを行いましょう。
※価値の高いコレクションなどがあった場合は遺産相続に含まれる場合もあります。

遺言書を書く

今回は書式がおかしいと無効にされやすい「自筆証書遺言の書き方」について、例を見ながら解説していきたいと思います。
※公正証書遺言に関しては、公証人が必要なことを書き進めてくれるものなので今回は省略します。

遺言書を書く用意をする

まずは、遺言書を書くために必要なものを用意しましょう。

使いやすく保存がきくもの。まずは手元にある紙に書いてみるのもいいでしょう。何を選んでいいかわからない人には「遺言書用紙」として商品化されたものがおすすめです。

  • 筆記用具

特に定められているわけではありませんが、簡単に消せないようなボールペン、万年筆、毛筆などがおすすめです。
※修正ペンや修正テープはNGです。

  • 印章

基本的には印鑑証明を登録してある「実印」、または「銀行印」を用意してください。シャチハタや三文判、拇印はトラブルのもとになる可能性があるのであまりおすすめできません。

  • 封筒

法律で決まっているわけではありませんが、紙の保存性を高めるために入れておきましょう。遺言書よりもやや大きめで、中身が透けて見えないような厚手のものを選びましょう。純白で上質の和紙でできた奉書封筒がおすすめです。

〈その他入手しておきたい書類〉

  • 戸籍謄本または抄本
  • 不動産登記全部事項証明書(家や土地がある場合)
  • 預貯金通帳(預金がある場合)
  • 有価証券類(株、有価証券がある場合)
  • 生命保険証書(生命保険がある場合)
  • 鑑定書類(骨董品、美術品、貴金属がある場合)

実際に遺言書を書いてみよう

次は、実際に例を見ながら遺言書を書いてみましょう。
遺言書の書式には特に法律で決まったものはありません。縦書きでも横書きでも構いません。ただし、手紙文やビジネス文書と同様、一定の形はありますのでそれに則って書いていきましょう。

※実際に書くときは、住所氏名や土地などは、自分のものに変えてください。

〈解説〉

  1. 用紙の最初に「遺言書」と題を書く。
  2. 「遺言者〇〇は、~」と自分の名前を書いて本文を書き出す。※「私は、~」や「私、○○(本人の名前)は、~」という書き出しでもOKです。
  3. 不動産や貯金通帳などの遺産を第一条、第二条…と振り分けて詳細を記す。
  4. 「付言」は、遺産相続に関すること以外の内容を付け加えて書く部分。必ず書かなければならないわけではないですが、家族へのメッセージや遺産をどうしてそのように分けたかを説明できるので、記しておいて損はないでしょう。付言の有無で遺言書の内容がスムーズに行われることもあるようです。
  5. 最後に日付、住所、名前を正確に書いて、捺印。

 

また、遺言書の中に執行者を記しておくことも大切です。遺言の執行者は相続人がなることもできますが、事前に相談してある弁護士及び相続人とは関係のない信頼できる人・団体の方が望ましいです。
※相続人に任せると分配にトラブルが起きやすいため。

注意

  • 不動産は家と土地の登記薄謄本通りに書く。
  • 銀行名・支店名・預貯金の種類・口座番号を書く。
  • 相続人に当たる人には「相続させる」、相続人には含まれないが相続させたい人には「遺贈する」と書く。

間違った書き方

  • 扱い方が変わってしまう書き方

自宅を長男に「与える」、山を次男に「譲る」、田畑を次男に「渡す」、別荘を三男の「ものとする」などという書き方をすると遺贈扱いとされ、不動産である家を引き継がせるために他の相続人の印鑑証明書が必要になってしまいます。必ず「相続させる」と書きましょう。

  • 遺産の指定

「私が死んだら遺産の全てを妻に相続させる、妻が亡くなったら息子に相続させる」というふうに、相続させた遺産をさらに誰かに渡させるといったことまでは指定ができません。できるのはあくまでも自分のことだけになります。

相続法の改正による変更点

平成30年7月6日、相続法の改定により、改定前よりも相続をスムーズに行いやすくなりました。

これまでは、手書きで書かなければならず、改ざんの恐れや、年を取って文字が上手く書けない人が自分の手で書いた文字を「別人の文字」と判断される恐れのあった自筆証書遺言ですが、法改正により、パソコンでの作成が認められるようになりました。捺印は必要ですが、負担の軽減になるでしょう。
また、自筆証書遺言を法務局が預かってくれるようにもなりました(令和2年7月10日より開始)。

〈その他の変更点〉

  • 既に住んでいた相続人の配偶者が追い出されて家を売り払って分配する問題。

→配偶者居住権及び配偶者短期居住権によって起こらなくなる(令和2年4月1日施行)。

  • 相続人ではないものの、介護をしていた親族は遺産をもらう権利を主張できる。

※令和元年7月1日をもって既に施行されています。

 

詳しくは、こちら↓のページに記載されていますので、気になる方はチェックしてみてください。
約40年ぶりに変わる“相続法”! 相続の何が、どう変わる?

遺言書を書くならキットがおすすめ

なかなか難しいですよね。遺言書を間違えずにしかも簡単に書くならば、すべてがそろっている遺言書キットがおすすめです。

【初めての遺言書】単なる「お願い」にしないための書き方 まとめ

今回の記事には専門的な記述が多く用いてしまったので、遺言書を書くのを諦めそうになった方がいるかもしれません。しかし、遺言書を残しておくことは大変大切なことなので、終活の一部として是非挑戦してほしいです。遺言書キットなどを使うこともおすすめします。
まずは、自分の状況の把握から始めてみてください。相続人である家族たちのためになる遺言書作りができることを願っています。

ABOUTこの記事をかいた人

山本 幸恵

年齢:56歳
夫が他界し、一軒家で一人暮らしをしている。最近は時間を持て余し、以前から興味があった終活を始めることにした。その際に取得した情報を備忘録として記事に残しておいたことが記事作成のきっかけ。